第1回:現場の課題から始める!製造現場の進捗管理システム構築のきっかけとは?
生産状況の可視化
AppSheetを活用して製造現場の進捗状況を見える化したシステムについて、テンプレート紹介を兼ねて全7回でお届けする連載の第1回です。
本記事では、まず「なぜこのシステムを構築しようと思ったのか?」という現場の課題と構想の背景についてお伝えします。
現場のリアルな課題とは?
本システムは、輸送機器部品の製造を行う現場で生まれたニーズから構築が始まりました。製品の多品種・小ロット生産が求められる中、以下のような日々の困りごとが顕在化していました。
① 進捗確認が非効率
製品ごとの加工工程の進捗は、担当者に口頭で確認するか、Excelや紙帳票を開いて探す必要があります。都度一つひとつを現場を確認するため、リアルタイム性がなく、ミスや遅れの発見も後手に回ることが多いです。
② 作業ボードが活用されていない
作業ボードの作業予定を重視せず、工程が設備や担当者の割当が記録されていない/属人的になっているため、設備管理や人員調整などリソース管理に支障が出ています。
③ 部署単位での状況把握が難しい
製品単位で進捗は追えるものの、「部署ごと」「工程ごと」に横断的に状況を把握する仕組みがなく、全体最適の判断が難しい状況にありました。

システム化で実現したかったこと
上記のような課題を受けて、現場の声をもとにシステム構想を練り、以下のような理想像を描きました。
① 現場モニターで「進捗の見える化」
工場に設置したタッチパネルモニターで、部署ごとに製品とその加工工程を一覧表示。完了状況はアイコンや色で即時に分かるようにします。
- 行:製品(管理番地つき)
- 列:加工工程(例:切削・溶接・組立・検査)
- セル:完了状況、設備名、担当者名を表示
例:「○ 溶接済(A設備・佐藤)」
② スマホやPCから工程完了を入力
現場リーダーがスマートフォンで、工程ごとの完了報告や設備・担当者の登録を簡単に行えるようにします。AppSheetのフォームを活用し、現場でも3タップ以内で登録完了を目指しました。
③ 工程・設備・担当者はマスター管理
加工工程や設備は、生産計画をもとに自動的にマスタ登録され、担当者情報は人事システムと連携して最新の人員情報が反映されるように構想しました。
④ 工数実績も収集
工程ごとの作業時間も収集することで工数管理も行います。
⑤ 振出かんばんや内示情報との連携
製造指示の起点となる「振出かんばん」の内容から製品を自動登録し、将来的には内示データと連動する構成を視野に入れています。

なぜAppSheetを選んだのか?
選定にあたっては、以下の理由からノーコード開発のAppSheetを採用しました。
理由 | 内容 |
---|---|
開発スピード | コード不要で現場の要望を素早く反映できる |
柔軟な表示 | ダッシュボードでマトリクス表示や進捗をリアルタイムに表示 |
モバイル対応 | スマホでも入力・閲覧でき、タッチ操作やQR読み取りもスムーズ |
Google連携 | Google スプレッドシートを基盤としたデータ管理がしやすい |
外部連携 | APIやWebhookで他システムとつなぎやすい構造 |
機能拡張 | 使いながら機能拡張や変更を柔軟に行える |
次回予告:要件整理から始める設計の第一歩!
次回は、実際にどのように機能要件と業務フローを整理したか、そしてAppSheetで何をどのように実現するのか、その全体像を詳しく解説していきます。