現場の声をシステムに落とし込む

AppSheetテンプレート
AppSheetテンプレートテンプレート生産進捗システム

第2回:要件整理とシステム設計の第一歩

 前回は、現場の課題とシステム構想を紹介しました。今回は、その構想を具体的な機能要件と業務フローに落とし込んでいく過程を解説します。

 紙やExcelで管理されていた情報を、どうAppSheetに置き換えていくか?
 答えは「現場の作業手順や使う人の視点で分解すること」でした。


要件整理の出発点は「現場の行動」

現場の管理者や作業者に以下のようなヒアリングを実施しました

  • 「作業の流れはどうなっていますか?」
  • 「どこで時間がかかっていると感じますか?」
  • 「どんな情報がすぐ見えたら便利ですか?」

その結果、次のような業務フローが明確になりました

基本フロー

  1. 振出かんばんをもとに、製造すべき製品が確定
  2. 製品には、あらかじめ決まった 加工工程の流れ(例:切削→溶接→組立)
    • 加工工程の流れをパターン化する
  3. 出荷指示で在庫棚確認し、生産が必要な場合かんばん振り出し
  4. 振り出しかんばんから、工程ごとの設備と作業担当者をリーダーが割り当て
  5. 各工程の作業実績を作業者がスマホなどで登録
  6. 現場モニターには、全体の進捗が工程ごとに表示
    • クラウド運用のため事務所や遠隔地でも同じ情報を共有

機能要件をリスト化する

 業務フローを明らかにしたあと、それをAppSheetで実装すべき機能として整理しました。

No.機能カテゴリ機能内容実装意図
1製品管理製品と管理番地・部署を登録工場内の製品単位で進捗を追跡
2工程進捗登録各工程の完了報告、設備・担当者の記録
QRコードなどを使い、利便性を追求
誰が、どの設備で、いつ作業したかを可視化
3工程マスタ自動生成製品が登録されたら、定義済み工程を自動付与登録の手間を省き、ヒューマンエラーを防止
4モニター表示現場モニターに「製品 × 工程」マトリクスを表示各工程の進捗・担当者を一覧で見える化
5ダッシュボード切替今日の予実、未完了一覧などの表示切替管理者の視点で問題箇所を即把握
6通知機能完了していない工程を定時にリマインド抜け漏れ防止、日報代替としても活用

ユーザー別の使用シーンを想定する

「誰が・どこで・何をするか」を想定すると、UI設計や入力項目の設計がブレない

現場のリーダー(スマホ or PCで入力)

  • 製品と作業予定日、工程パターンを選び、設備・作業者を選択+完了日を登録
  • 操作は3ステップ以内、ボタン操作中心に

事務所(PC・ダッシュボード閲覧)

  • 今日の進捗一覧、未完了リストを閲覧
  • 切替で「部署ごと」「工程ごと」に全体を俯瞰

現場モニター(自動更新UI)

  • 一定時間ごとに画面が切り替わる(工程単位など)
  • 見るだけのUIで操作は不要(操作も可能)

具体的な使用イメージ(例)

シーン操作内容使用機能
朝礼時部署ごとの予定工程を確認「本日予定」+Dashboard
作業完了時作業者がスマホで完了日時を登録「作業入力フォーム」
終業時未完了工程を確認し、残タスクを共有「未完了一覧」+リマインドチャット(メール)

要件整理のポイントまとめ

  • 業務フローをそのままシステムにするのではなく、「データ」と「操作」に分けて考える
  • 使う人ごとの視点でシーンを分解し、それぞれに最適なUI/UXを設計
  • 入力ミス・漏れを防ぐため、可能な限り自動生成・自動反映を活用

細部のヒアリング

この後、システムを設計するにあたり、気になる細かな仕様をヒアリングして要件を固めます

何をどのように管理する必要がある
テーブル、マスターにどのように反映させ管理する

質問事項

  • 製造部門の種類、数
    • 1課、2課、3課…
  • 振り出しかんばんは品番ごとに複数枚あるか
    • 1枚
    • 複数あり
  • 上記問いで複数ある場合 加工予定日は別日になるか
    • 別日
    • 同じ日でまとめる
  • 製造工程のパターンは何種類ぐらいある
    • x種類
  • 製造工程のパターンは課ごとに異なる
    • 異なる
    • 同じ
  • 工程に設備は何種類ぐらいある
    • 工程による
  • 設備を持たない工程はあるか
    • ある
    • ない
  • 設備に担当者は複数
    • 複数
    • 一人

 気になることを、ヒアリングし、システムのイメージを具体化していきます

次回予告:データ設計で差がつく!マスター・トランザクションの関係とは?

次回は、今回整理した要件をもとに、具体的なテーブル構成やリレーション設計に入っていきます。マスター/トランザクションの切り分け、AppSheetでの参照関係の作り方を実例を交えて紹介します。